『ネオニコチノイド』
という農薬をご存じでしょうか?
なんでも、
ヨーロッパでは禁止されているのに
まだ日本では、使われている
危険な農薬だとか。
もしや、日本だけ、
ネオニコチノイドの怖さに
気づいていないというのでしょうか!?
今回は
「ネオニコチノイド系農薬」について
取り上げていこうと思います。
ネオニコチノイド系農薬とは
まず、
「ネオニコチノイド系農薬」が、
どういうものかについて、
確認しておきましょう。
信憑性の高そうなところで、
アメリカの国立毒性プログラムのレポートを参考にします。
(参考:NTP Research Report on the Scoping Review of Potential Human Health Effects Associated with Exposures to Neonicotinoid Pesticides)
「ネオニコチノイド系農薬」は、
1990年代から使われている農薬です。
もともとは、
「昆虫に対して、神経毒性を示す殺虫剤」
というフレコミで使われ始めた農薬です。
しかし、
人間にも、昆虫と同じ神経系が存在するため、
人間にも悪い影響があるのでは!?
という心配がされているわけですね。
ただし、一方で、
一部のネオニコチノイド系農薬については、
哺乳類の神経系との親和性は低いことは
すでに調べられているようです。
つまり、
ネオニコチノイドは、
昆虫と比べると、
哺乳類には効果が出にくいことまでは分かっている
ということですね。
「親和性が低い」・・・
残念ながら「無害」だとは言われていないようですね・・・
人間も、昆虫ほどではないですが、
ネオニコチノイドにさらされれば、
何かしらの作用はしてしまう心配はある
と考えた方がよさそうです。
ちなみに、
2016年に米国食品医薬品局がおこなった
「農薬モニタリングプログラム」によれば、
「ネオニコチノイド」は、
食品から最もひんぱんに検出される
農薬の一つに含まれています。
この結果からすると、
おそらく、私たちも、
「ネオニコチノイド」を含んだ食品を
食べてしまっていそうですね・・・。
ネオニコチノイドはどのように作用する?
さて、
「ネオニコチノイド系農薬」について
少し詳しくなりました。
では、次は、
「ネオニコチノイドが、どのような作用の仕方をするのか」
というところについても、理解しておきましょう。
「ネオニコチノイド」は、
昆虫の「ニコチン性アセチルコリン受容体」
という器官に結びつくことで
神経毒性を発現すると言われています。
本来、
「ニコチン性アセチルコリン受容体」というのは、
体内で作られた「ニコチン性アセチルコリン」が、
結びつく器官です。
その「ニコチン性アセチルコリン受容体」に対して、
「ニコチン性アセチルコリン」の代わりに、
「ネオニコチノイド」が結びつくことで、
神経毒性が発現されるということになります。
「ニコチン性アセチルコリン」は、
「神経伝達物質」と呼ばれるもので、
脳から体中に命令を出すための
「大事な命令書」のようなものです。
なんだかややこしくなってきたので、
整理しておきましょう。
・ニコチン性アセチルコリン⇒大事な命令書
・ニコチン性アセチルコリン受容体⇒大事な命令書の受け取り窓口
・ネオニコチノイド⇒偽物の命令書
という感じでしょうか。
「ニコチン性アセチルコリン受容体」が
偽物の命令書である「ネオニコチノイド」を
受け取ることで神経毒性を発現するということですね。
少しわかりやすくなりましたかね?
つまり、
ネオニコチノイドは、
人間にとっても、昆虫にとっても、
とても大事な器官に「偽物の神経伝達物質」として、
結びつくことで、悪い影響を与えるということになります。
ただし、
昆虫の「ニコチン性アセチルコリン受容体」と
人間の「ニコチン性アセチルコリン受容体」の構造は、
まったく同じではないため、
人間には、効果が出にくいのです。
しかし、
そんな大事な器官に影響を与えるのに、
「人間には効果が出にくいから大丈夫!」
で済ませてよいのでしょうか。
しっかりと、安全性が調べられているのか・・・
気になりますよね。
ネオニコチノイドによる人体への影響に関する研究
では、続いて、
「国立毒性プログラム」のレポートに
まとめられているネオニコチノイド系農薬の人体への影響に
関する研究をいくつか見ておきましょう。
ネオニコチノイドと自閉症
「ネオニコチノイド(イミダクロプリド)の使用」と
「自閉症」の関係について調べられています。
この報告によれば・・・
「407人の自閉症の子ども」と
「262人の通常発達の子ども」を調査したところ、
「自閉症の子ども」が、
母親が妊娠中にネオニコチノイドを使っていることが
わずかに多かったという結果になっています。
さらには、
ネオニコチノイドを「頻繁に使用していた母親」の方が、
子どもが自閉症になってしまう確率が
高まってしまったようです。
どうやら、
「ネオニコチノイド」と「自閉症」には、
何の関係もないとは言い切れないようです。
ネオニコチノイドと無脳症
次は、
「ネオニコチノイド」と「無脳症」の関係についてです。
といってもこちらの報告は、
ネオニコチノイドというよりも、
どちらかというと農薬全般が対象になっているようです。
「居住地から500m以内で農薬にさらされた妊婦」と「無脳症」
について、調べられています。
一般の人より、多くの農薬にさらされた場合の調査ということです。
そして、
さらされる農薬も一種類だけではないので、
この報告から、
ネオニコチノイドのみの影響を見極めることは
少し難しいようです。
結論としては、
ネオニコチノイド(農薬)にさらされると、
「無脳症のリスクが高まる」ことについて、
報告されています。
農薬の怖さが、
うかがい知れる調査結果ですね。
地元農産物によるネオニコチノイド中毒
次は、
日本で発生した症例についての研究報告です。
特定の地域で、
「指の震え」「記憶喪失」「頭痛」「疲労」「腹痛」などの
症状が集団で発生しました。
これらの症状を訴えて、病院に来た人に
尿の検査を行ったところ、
ネオニコチノイド系農薬の代謝物が
検出されたとのことです。
そして、
地元の農産物を食べるのを禁止したところ、
数日から数か月で症状が治まった
と報告されています。
「日本の農産物で起きたことである」
ということを考えると少し怖い気がします。
ただし、
症状は、
「時間の経過で治まった」
とされています。
一生、残るものではなかったというのは、
せめてもの救いだと思います。
今後、
他の後遺症が現れなかったかどうかの追跡調査も、
おこなってほしいところですね。
農薬産業の労働者には健康被害がある
パキスタンで
農薬産業労働者に対して行われた調査です。
パキスタンの中小規模の工場では、
まだまだ不安全な習慣が残されています。
そして、そこでは、
従業員の方々は、
高い濃度な農薬にさらされています。
その結果、
・「酸化ストレス」
・「肝機能・腎機能の異常」
を著しく増加させている
ことが報告されています。
どうやら、
パキスタンの農薬工場で働くならば、
中小規模ではなく、
せめて、大きな工場にした方がよさそうですね。
冗談はさておき、
日本の工場で働く場合も、
化学物質を扱う場合は、
しっかりと注意しましょう。
化学物質の健康影響を証明するのは、
簡単ではないので、
あなたが、化学物質による体調不良を訴えても、
適切な保証がなされることはないでしょう。
欧州でもネオニコチノイドのすべてが規制されているわけではない
7種類のネオニコチノイド系農薬
さて、なんだか、
怖い話になってきましたね。
こんなに危ない可能性のある農薬ならば、
きっと各国でさぞ、規制が進んでいることでしょう。
ここで、
「ネオニコチノイド系農薬」の
規制についても見ておきましょう。
ヨーロッパでは、
ネオニコチノイドは、
禁止されているという話でしたが、
実際のところ、どうなのでしょうか?
どうやら、
欧州でも、「ネオニコチノイド系農薬」を
「完全に」使用禁止にしているわけではありません。
「ネオニコチノイド系農薬」には、
以下の7つの種類があります。
・クロチアニジン
・ジノテフラン
・ニテンピラム
・アセタミプリド
・イミダクロプリド
・チアクロプリド
「完全に」というのは、
この7種類すべてが、
禁止されているわけではないということです。
ちなみに
人体への影響に関する研究も
「イミダクロプリド」には
多くのデータがあります。
一方で、
「ジノテフラン」には、
あまり研究データがありません。
ですので、
ネオニコチノイド系農薬に関する
人体への影響の研究は、
現状、十分に進んでいるとは
言いがたい状況でもあるわけです。
フランスでは全面禁止だが・・・
「ネオニコチノイド系農薬」を、
欧州で一番、熱心に規制しているのが、
「フランス」です。
フランスでは、
「ネオニコチノイド系農薬」のすべてが
使用禁止となっています。
しかし、
他の欧州諸国を見てみると、
7種類の内のいくつかを
規制しているという国の方が多いようです。
ヨーロッパ全体が
完全にネオニコチノイドを使用禁止に
しているわけではないのですね。
欧州の規制は、環境配慮の側面が大きそう
確かに、日本では、
すべての「ネオニコチノイド農薬」が
使用可能となっています。
この事実だけを見ると、
「日本は欧州より、
少し遅れているのかなぁ」
と心配になりますよね。
ただ、日本も、
一国だけおかしなことをしている
わけではありません。
国会答弁によれば、
日本も、「WHO」や「他の専門機関」の見解を
参考にしたうえで、
「残留基準」や「使い方」を
決めているのです。
(参考:第198回国会 21 ネオニコチノイド系農薬等に関する質問主意書)
現在の安全性評価で、
安全だとされている量しか
使わないなら、OKだよ!
という話ですね。
そして、
欧州での規制についても、
「人体への影響」だけを考えて、
規制が行われているわけではないようです。
どちらかというと
「ミツバチの大量死事件」を受けて
環境への配慮のために
規制をおこなっている側面が
大きいようにも見受けられます。
(参考:EU Court puts end to emergency use of bee-toxic pesticides)
残念ながら、
ネオニコチノイドの人体への影響は、
データが足りない部分も多いです。
ニテンビラムについては、
7件。
ジノテフランに至っては、
4件しか研究がおこなわれていません。
これだけのデータしかないのに、
「全面使用禁止!」
という話になるならば、
とっくにペットボトルはスーパーから
姿を消していることでしょう(笑)
ペットボトルに、
実は、注意が必要な理由については、
↓の関連記事もぜひご覧ください。
さて、どうやら、
現在の各国のネオニコチノイドの規制は、
欧州も日本も
「人体への影響がはっきりしない内は規制しない」
という状態だと考えたほうがいいかもしれません。
ただし、
お肉については、
「ホルモン剤」を全面禁止にしているヨーロッパですので、
今後、ネオニコチノイドを全面禁止にする
日が来る可能性もありそうです。
結局、ネオニコチノイドの人体への影響は?
今回は、
「ネオニコチノイド系農薬」
について、見てきました。
結局のところ、
ネオニコチノイド系農薬は、
人体に悪影響を与えるのでしょうか?
やはり、取り上げた研究で、
気になるのは、以下の3つでしょうか。
・ネオニコチノイドと自閉症の関係
・ネオニコチノイドと無脳症の関係
・日本の野菜を食べた人のニコチノイド中毒
そして、やはり、
「農薬の影響」で最も心配なのは、
生まれてくる子どもへの悪い影響だと思います。
農薬の長期的な人体への影響というのは、
「まだ不明な部分が多い」
と言われているのも事実です。
↓の記事にもまとめております。
ただし、
欧州でおこなわれている
ネオニコチノイドの規制については、
どちらかというと、
「人体への影響」というより、
「環境への配慮」という意味合いの方が
大きいようです。
ネオニコニコチノイドの人体への影響を議論するには、
まだまだデータが足りていないのでしょう。
だから、
保守的な日本は、他国に先んじて、
規制を強化するようなこともしません。
農薬のような薬剤には、
「内分泌かく乱物質」としての側面もありますので、
規制が悠長におこなわれている内に、
影響を受ける子どもたちが
どんどん増えていってしまうとしたら、
それは、なげかわしいことだとは思いますね。
「内分泌かく乱物質」、怖いですよね・・・
というわけで、
「内分泌かく乱物質について、よく知らない!」
という方は、ぜひ、↓の関連記事をご覧ください。
大人が
新しい命を守らなくて、
いったい誰が守るのでしょう。