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ポリプロピレンの食器って危険なの?レンジで使っても大丈夫?

その食器は危ない?

プラスチックの食器は、とても便利です。

割れないし、軽いし、値段も安いし、
いいことずくめなようです。

しかし、
昨今、プラスチックは体に悪いのではないか?
という話も出始めています。

世の中には、
無知に対する罰ほど恐ろしいものはありません。

今回は、
プラスチックの中でも、
特になじみの深い「ポリプロピレンの食器」に目を向けていこうと思います。

赤ちゃんの哺乳ビンに「ポリプロピレン製」のものを選んだ方にとっては、
必見の内容かもしれませんね。

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ポリプロピレンの食器は危険がないとは言い切れない!?

今回の結論は、
ポリプロピレンの食器は、危険がないとは言い切れない」です。


「ポリプロピレン」は、
食器や調理器具によく使われていますよね。

しかし、その割に、
危険がないかどうかについて
しっかりと調べられていないという印象を受けます。

化学的な構造のせいなのか、
「ポリプロピレン」は、プラスチックの中でも、
危険は小さいと認識されているようです。

今回は、
一般的に認識されている通り、
「ポリプロピレンは、”本当に”危険ではないのか」というところについて、
ふみ込んで、見ていこうと思います。

ポリプロピレンに、心配なのは「内分泌かく乱性」!?

まずは、
ポリプロピレンにおける”危険”とは何なのか?
というところから見ていきましょう。

当然ながら、
食器に使われるような「ポリプロピレン」には、
誰が見てもわかるような「毒性」はありません。

もし、「ポリプロピレン」に
分かりやすい「毒性」があれば、
たちまちニュースになり、
そのような食器は、店頭には並ばなくなるでしょう。

そのため、
今回のポリプロピレンの「危険」については、
内分泌かく乱性」の観点からの話になります。

経済産業省によれば、
内分泌かく乱性」とは、以下のように定義されています。
(参考:経済産業省 内分泌かく乱物質問題

生物個体の内分泌系に変化を起こさせ、その個体又はその子孫に健康障害を誘発する外因性物質

経済産業省 内分泌かく乱物質問題より

つまり、
簡単な言葉で言い換えれば、
外から来る物質が、体の中のホルモンの働きを変えて、
 その人やその子孫に問題を引き起こすことがある

ということです。

ホルモンは、
体の中のいろいろな働きに影響を与えるものですので、
考え方によっては、
「”内分泌かく乱物質”はとても危険である」と言えるのです。

ポリプロピレンは、ラットの研究では危険はないとされた!?

では、
ポリプロピレンには、
“内分泌かく乱性”があるのか」という話に入っていきましょう。

まず、
「”一部の”内分泌かく乱性」は
ラットを使った実験で、
「簡易的に見極めること」ができるのです。

“一部の”と表現しているのは、
体内には、さまざまなホルモンが存在しているように、
「内分泌かく乱物質」も、
さまざまな作用を与えるものがあるからです。

そして、当然ながら、
こういった研究は、倫理的な問題があるため、
人体で行うことはできません。

ですので、
あくまでも、お試し実験の一つとして、
参考にしておきましょう。


まずは、
このラットを使った研究報告を参考に、
「ポリプロピレンの内分泌かく乱性の有無」を見てみましょう。


2013年の研究報告です。
Uterotrophic and Hershberger assays for endocrine disruption properties of plastic food contact materials polypropylene (PP) and polyethylene terephthalate (PET)

以下、研究の内容を見ていきましょう。

ポリプロピレンを溶かした「ポリプロピレン溶液」を、
実験用のラットに10日間、飲ませ続けます。

10日後、
「ポリプロピレン溶液」を飲ませ続けたラットを解剖して、
「子宮」や「精巣」などの器官の重さが重くなっているかどうか、
を確認をするといった研究です。

そして、
そのラットの器官が、比較対象のラットの器官より、
重くなっていれば、
「ポリプロピレンは、内分泌かく乱性を有する」と
簡易的に判断できるのです。


では、その結果を見てみましょう。

結果は、
ラットの精巣や子宮は有意に重くならなかった
ことが報告されています。

つまり、
ラットを使った簡易的な実験では、ポリプロピレンは内分泌かく乱性を示さなかった
という結論になります。


ちなみに、
過去に”内分泌かく乱性”が認められている「ビスフェノールA」で、
同じ試験をするとどうなるかも見ておきましょう。

「ビスフェノールA」で、同様の試験を行なえば、
ラットの子宮等が重くなる
という結果が出ています。
(参考:Immature rat uterotrophic assay of bisphenol A.

つまり、この実験結果だけを見れば、
「ポリプロピレン」は、
「他のプラスチック(ビスフェノールA)」よりは、
危険ではないという見方をすることもできます。

しかし、あくまで、
本試験は、「簡易的に見極める方法」なので、
この結果をもって、
「ポリプロピレン=無害」と判断するのは、
安直すぎます。

そして、
何より、ヒトのホルモンは、
男性ホルモンや女性ホルモンのような
生殖ホルモンだけではありません。

そのため、
この実験の結果だけをみて、
「ポリプロピレン=無害」
と決めつけることはできません。

細胞レベルでの実験では、ポリプロピレンに内分泌かく乱性を確認!?

ここまでの話では、
「ポリプロピレンの内分泌かく乱性」について、
ある程度、危険はないと考えることもできるという結論になりました。

しかしながら、
「内分泌かく乱物質」を確認するには、
ラットを使う以外にも方法があります。

それは、
試験管の中に、培養した細胞や、微生物を使って、
試験をするといった方法です。

しかし、
こちらの試験も、残念ながら、
人体そのものを使った試験ではありませんので、
お試し実験の一つという扱いです。

2019年ゲーテ大学の研究報告です。
(参考:Benchmarking the in Vitro Toxicity and Chemical Composition of Plastic Consumer Products

様々なプラスチックの製品を集めて、
「内分泌かく乱性」を検証した研究です。

ポリプロピレンも検証対象になっています。

ポリプロピレンの製品として検証されたのは、
以下の通りです。

内分泌かく乱性が検証されたポリプロピレン製品:
 1,詰め替え可能な飲料ボトル
 2,ヨーグルトのカップ
 3,グミキャンディのパッケージ
 4,ハンカチのパッケージ
 5,シャンプーのボトル

1~3までの製品は、
「食べ物が触れるところで使われるポリプロピレン製品」というくくりになるので、
注目しておきたいところですね。

結果を読み解いてみると、
ポリプロピレンの中でも、
ヨーグルトのカップ」には、注意が必要なようです。

ここでは、
「ヨーグルトのカップ」には、
男性ホルモンの働きを邪魔する作用」があること
が示されています。

男性ホルモンの働きを邪魔する作用」のことを、
抗アンドロゲン作用」と言います。

ひとまず、この結果から言えることは、
少なくとも、使い捨てのポリプロピレン製のカップを、
洗って使い回すというのはやめた方がいい
ということでしょう。

プラスチックは使い続けると、
少しずつ劣化していくものです。

ここで取り上げた研究においては、
「ポリプロピレン」にも、
「内分泌かく乱性」すなわち、
「抗アンドロゲン作用」が確認されています。

つまり、
ポリプロピレンは、
無害とは言い切れないのです。

ただし、
この研究報告の結論にも記されていますが、
ポリプロピレン製品の毒性は様々」でした。

つまり、
ポリプロピレンの製品は、その「製造方法」によって、
その毒性は違ってくるということです。

ですので、もしも、
あなたが赤ちゃんのために
ポリプロピレン製の哺乳ビンを購入していたとしたら、
その毒性については、
販売元に問い合わせてみるのが、手っ取り早いでしょう。

なぜなら、
消費者には、知る権利があるからです。

では、ここからは、
なぜ、ポリプロピレンの製造方法によって、内分泌かく乱性が変わってくるのか?
という話も見ておこうと思います。

ポリプロピレンの内分泌かく乱性は、「添加剤」のせい?

ここまでの話では、
ポリプロピレンの製品を対象に
内分泌かく乱性の有無」の確認をしてきました。

しかし、どうやら、
ポリプロピレンは”製造方法”によって、
その「内分泌かく乱性」が変わってきてしまうことがわかってきました。

では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか?

それは、
ポリプロピレンが作られる時に、
添加剤」が使われるからです。

そして、その「添加剤」の使い方は、
製品によって、さまざまです。

プラスチックが製造される時には、
たいていの場合、「添加剤」として、
何かしらの化学物質が混ぜられます。

ポリプロピレンについては、
“紫外線に弱い”という弱点を持っているので、
UV安定剤」という”添加剤“が混ぜられることが多いです。

「日焼け止め」のような働きをする薬剤ですね。

「添加剤」とは、
つまり、料理でいうところの「調味料」といったところでしょうか。

プラスチック製品は使い続けていると、
徐々に劣化してしまいます。

そして、劣化したプラスチックからは、
「添加剤」が、外側に溶け出してきてしまうのです。

そして、
その「添加剤」が「内分泌かく乱性」を
有している可能性が高いのです。


2021年の北海道健康科学大学の研究報告を見てみましょう。
(参考:Study finds UV stabilizers with endocrine-disrupting potential in plastics

日本国内の小売店で買ってきた
ポリプロピレン製品に対する研究です。

たいていのポリプロピレンは、
紫外線に強くないため、
劣化を避けるための「UV安定剤」が使われる、
という話でしたね。

研究では、
この「UV安定剤」が、
ポリプロピレン製品に含まれていることを突き止めた上で、
「テストしたUV安定剤のほとんどが内分泌かく乱性を有する」ことについて、
報告されています。

ポリプロピレン製品は、
比較的、耐久性が高いため、
一度購入した製品を、
長く使い続ける人も多いでしょう。

しかし、
そのポリプロピレンの食器や調理器具からは、
何かしらの「添加剤」が少しずつしみ出してきている、
ということに、気をつかう必要があるようです。

ポリプロピレンはレンジや食洗器で使っても大丈夫?

さて、では、
ポリプロピレンを電子レンジで使っても大丈夫なのか?
という話も見ておきましょう。

ここまでの話を
総合すれば、もはや答えはお分かりかもしれませんね。

ポリプロピレンは、電子レンジでは使わない方がいい」です。

「電子レンジ」は、
プラスチックの劣化を早めます。

ちなみに、
「食洗器」についても同様のことが言えます。

プラスチックの劣化を早める要素としては、
一般的に、下記が挙げられます。

プラスチックの劣化を早める要素:
 ・温度
 ・水
 ・紫外線

「電子レンジ」や「食洗器」を使えば、
プラスチックの劣化を早めることになります。

残念ながら、ミクロな視点から見れば、
劣化しないプラスチックは、存在しません。

劣化したプラスチックからは、
「化学結合が切れたプラスチックの一部」や、「添加剤」が
少しずつ溶け出してきます。

そして、
溶け出してきた「添加剤」が、
「内分泌かく乱性」を有する可能性が高いことは、
今回、見てきたとおりです。

かつて透明だったポリプロピレンの容器が、
うっすら白みがかっているような状態になっているならば、
その容器は、すでに寿命を迎えているので、ご注意ください。

結局、ポリプロピレンの食器は、危険なのか!?

今回は、
ポリプロピレンの食器」について、取り上げました。

内容をまとめます。

・「一部のポリプロピレン製品」には、「内分泌かく乱性」は認められた。
・製造時に混ぜられる「UV添加剤」が「内分泌かく乱性」を有している。
・「電子レンジ」や「食洗器」に入れて使用しない方がいい。

ポリプロピレンの調理器具の中には、
「電子レンジで使ってもOK」とするものもあります。

しかし、
これは耐用性の観点からの話であり、
危険であるかどうかの観点からの話ではありません。

たいていの企業は、
我々が思うほど、責任を持って、
我々消費者の健康を守ろうと努力してくれるものではありません。

企業が「悪」なのではなく、
企業の本質が、
利潤を追求することだからです。

自分自身で身を守る努力をしていきましょう。