日本のお茶には、残留農薬がたくさん含まれている!
以前、少し話題になりました。
事の発端は、
2021年、”週刊現代”が出した衝撃的な記事でした。
記事のタイトルは、ずばり、
『日本茶は農薬まみれ それでも飲みますか?』。
実に、興味深いタイトルですね。
そして、
その記事に対し、”農薬工業会”は、痛烈に反論の見解を示しました。
(参考:週刊現代 2021 年 6 月 5 日号「日本茶は農薬まみれ それでも飲みますか?」に関する農薬工業会の見解)
”農薬工業会”という業界団体が、
正式に反論をしたことで、
「お茶、やっぱり大丈夫なんじゃん!」
と安心した方も多いことでしょう。
今回は、この問題を
少し蒸し返してみようと思います。
それでは、
「日本のお茶の農薬まみれ問題」について、取り上げていきます。
日本のお茶の農薬まみれ問題、デマではない!?
今回の結論は、
「日本のお茶の農薬まみれ問題は、デマで片づけてはいけない」です。
実は、私は、どちらかというと、
週刊現代に近い意見を持っています。
そして、
農薬工業会さんの反論が、
『…残留基準値以内の食品を飲食しても健康上の問題を生じません。』
の文言で締めくくられていることについて、
えっ、そこまで言い切っちゃうの・・・すごいな・・・
大丈夫なのかな・・・
と、感心を通りこして、少し心配をしています。
なぜなら、
ネオニコチノイド系農薬については、
長期的に見て、人体にどのような影響を与えるのか、
まだしっかりと確認できていないからです。
これは、一般論ですが、
「企業」や「利権を得ていそうな業界団体」の主張は、
全面的に信用してはいけません。
ちなみに、
「農薬工業会」は、
「農薬製造業者を中心として組織された任意団体」です。
(参考:農薬工業会について>事業目的)
言い換えれば、
「農薬工業会」は、
「農薬から利益を得ている団体」です。
企業や利権集団が、
自分たちが取り扱う商品について、
ネガティブな情報を発信するでしょうか?
農薬の製造業者が、
「実は、農薬は危険なのです!」
と喧伝しながら、農薬を売るでしょうか?
そんなことをしたら、売れる商品も売れなくなってしまいます。
以上のことを念頭に置きから、
農薬工業会の自己弁護は、
話半分くらいで聞いておくことにしましょう。
また、もちろん、
大衆の感情をあおることを目的としている週刊誌の話も、
話半分で聞いておいた方がよいです。
さて、
前提となる前置きをしたところで、
本題に入っていきたいと思います。
日本のお茶農薬まみれ問題を整理すると・・・
さて、まず、
「日本のお茶の農薬まみれ問題」を整理すると、
論点は、以下の2点になります。
・1点目:日本茶の農薬の残留基準値は、本当にゆるいのか?
・2点目:そもそも残留農薬は、体に悪いのか?
それでは、以上の2つの点について、
くわしく見ていきましょう。
日本茶の農薬の残留基準値は、本当にゆるいのか?
まず、
1点目の
「日本の農薬の残留基準値がゆるいのか」について、見ていきましょう。
・1点目:日本茶の農薬の残留基準値は、本当にゆるいのか?
・2点目:そもそも残留農薬は、体に悪いのか?
残念ながら、
日本茶の残留農薬の基準がゆるいのは、事実です。
”残留農薬基準値検索システム”を参考に「茶」について、
ネオニコチノイド農薬の残留基準値を調べてみましょう。
(参考:残留農薬基準値検索システム)
ヨーロッパの「Teas(お茶)」の残留基準値は、
EUの農薬データベースから、調べられます。
(参考:EUの農薬データベース)
ちなみに、
ネオニコチノイド農薬に分類される農薬は、7種類あります。
以下の表で、
「茶(Teas)」の”日本”と”EU”の農薬の残留基準値を、
比較しています。
農薬 | 残留基準値 (日本) | 残留基準値 (EU) |
---|---|---|
ジノテフラン | 25ppm | 0.01ppm |
クロチアニジン | 50ppm | 0.7ppm |
イミダクロプリド | 10ppm | 0.05ppm |
チアメトキサム | 20ppm | 20.0ppm |
アセタミプリド | 30ppm | 0.05ppm |
チアクロプリド | 25ppm | 10.0ppm |
ニテンピラム | 10ppm | 0.01ppm |
比べてみると、確かに、
お茶の残留基準値は、
日本の方が、ゆるいことがわかります。
「ジノテフラン」について、
「ヨーロッパよりも、日本の方が、2,500倍もゆるい」
というのも間違いではありませんね。
この事実に対して、
”農薬工業会”は、
”ADI”や”ARfD”などの難しい言葉を使って、
いろいろと反論しています。
ただし、
お茶について言えば、
日本の残留基準値は、ヨーロッパよりも、
かなりゆるいことが、事実として確認できましたね。
ですので、
「残留農薬を少しでも避けたい!」
という方は、
お茶を飲む量を減らす必要があります。
有機栽培や無農薬のお茶を選ぶのも、
良いでしょう。
そもそも残留農薬は、体に悪いのか?
さて、
「日本のお茶の残留農薬の基準が、ヨーロッパよりもゆるい」ことは、確認できました。
では、
「日本のお茶の農薬まみれ問題」の
2点目の論点を整理していきましょう。
・1点目:日本茶の農薬の残留基準値は、本当にゆるいのか?
・2点目:そもそも残留農薬は、体に悪いのか?
2点目は、
「そもそも残留農薬は、体に悪いのか」についてです。
実際のところ、
ここが最も重要であり、
専門家の方々の間でも、意見も分かれるところなのです。
この辺りの主張については、
”週刊現代”サイドも、”農薬工業会”サイドも、
やや正確ではないように、私には思えています。
では、これについて、
くわしく見ていきましょう。
人間と昆虫の神経系は、同じではない?
まず、
ネオニコチノイド系農薬が、
「昆虫には、効果的である」のに対し、
「人間には、ほとんど効果を示さない」というのは、
現時点で、一つの事実とされています。
ただし、
”週刊現代”の記事によれば、
『虫と人間の神経系の構造が変わりません』
とされていますが、さすがにそんなことはありません。
確かに、
ネオニコチノイド系農薬が、作用するとされる「ニコチン性アセチルコリン受容体」という器官は、
人間も、昆虫も、もっています。
しかし、
「ニコチン性アセチルコリン受容体」の有無だけを見て、
『虫と人間の神経系の構造が変わりません』としてしまうのは、
少し乱暴だと言えるでしょう。
当然ながら、
昆虫と人間の神経系の構造は同じではないため、
昆虫にも、人間にも、
農薬が同じように効果を発揮することはありません。
では、
「ネオニコチノイド農薬は人間に対して、無害なのか?」
と言われると、そうではありません。
そこが、
”農薬工業会”サイドの主張が性格ではないポイントです。
残留農薬は微量でも、無害とは言えない?
さて、
”農薬工業会”サイドの主張は、
「毒性試験で安全が確認されているので、残留基準を超えなければ健康上の問題は生じない」です。
この主張が、
正確だとは言えないのです。
話のポイントとして、重要となるのは、
「残留農薬は、基準値を守っていれば無害なのか?」
ということです。
「ネオニコチノイド系農薬」のような薬剤は、
生物の「受容体」という器官に結びつくことで、
その効果を発揮します。
そして、
生き物の「受容体」は、
ほんの微量の「神経伝達物質」が結びつくだけで、
体中に情報を伝えるものです。
このことから考えた場合、
人間の「受容体」に、
”ほんの微量の”「ネオニコチノイド系農薬」が、
結びついた場合にも、
人体に絶対に何も影響はないと、
言い切ることはできるのでしょうか。
「ほんの微量」というところが、とても重要です。
現代の毒性試験は、
「量が多くなればなるほど、毒性は強くなる」という
考え方が常識となっています。
そのため、
「量がほんの微量の時に、あらわれる毒性」については、
見逃されることが多いのです。
これを、「低用量問題」といいます。
つまり、
ネオニコチノイド系農薬のような化学物質については、
「ほんの微量(低用量)であるがゆえに発言する毒性」と「大量に曝露してしまった場合の毒性」といった、
発現の仕方が異なる毒性について、異なった側面から考える必要があるのです。
「ほんの微量(低用量)であるがゆえに発言する毒性」については、
研究の再現が容易ではないこともあり、テーマを慎重に扱わなければなりません。
ネオニコチノイド系農薬についても、
安易に「有害であるか、無害であるか」を結論づけてはいけないのです。
ですので、
たとえ、お茶の残留農薬が、基準値以下だからと言って、
完全に安全だとは言い切ることは、非常に危険だと私は考えています。
「ネオニコチノイド系農薬」について、
くわしくは関連記事まとめています。
結局、お茶の農薬、安全性ってどうなの?
今回は、
「日本のお茶の農薬まみれ問題」について、見てきました。
今回の話をまとめます。
日本のお茶の農薬まみれ問題のまとめ:
- お茶については、日本の残留基準値が、ヨーロッパよりもゆるいのは事実。
- 残留農薬は、基準値を守っていれば安全だと安易に結論づけてはいけない。
実は、世の中には、
意外にも、不都合な事実が多くあるのです。
「知らなかった!聞いていない!」
と後から、憤ったところで、
あなたやあなたの家族の健康に対して、
責任を取ってくれる人は、どこにもいません。
もちろん、
「金輪際、お茶は飲まない」という極端な選択をする必要はないと思います。
ただ、
私やあなたが、
少しずつ、残留農薬を避けるための行動を続けることが、
無責任な企業たちの意識が変わることにつながる可能性もあるのです。
大事なのは、我々消費者が、
少しずつ賢くなっていくことだと私は思っています。
お茶については、
有機栽培や無農薬の商品を選ぶことが、
解決策の一つになります。
お茶がお好きな方は、
ぜひ検討してみては、いかがでしょうか。