「玄米は体にいい。」
という話は、よく耳にしますね。
その一方で、
「玄米には、残留農薬が多いから、食べない方がいい。」
という意見もよく聞かれます。
玄米に残留農薬が多いのは事実のようですが、
一体、どちらが正しいのでしょうか。
今回は
「玄米の残留農薬には注意しないといけないのか」
について、取り上げます。
玄米には注意が必要!?
今回の結論は、
「玄米には注意が必要かもしれない」です。
玄米には、
「食べた方がいい」という意見を持つ人と、
「食べない方がいい」という意見を持つ人がいます。
なぜ、
このように意見が分かれるのでしょうか?
それは、
それぞれの専門家が、
自分の専門分野の観点からのみの意見を言っているからです。
具体的には、
「玄米を食べた方がいい」とする理由は、
あくまで、栄養学の観点からの話だからです。
「玄米を精米すると、栄養価が高い米ぬかが、捨てられてしまうため、もったいない」
という考え方です。
栄養価の観点から見れば、
それは非常に正しい意見です。
一方、
「玄米を食べない方がいい」とする理由は、
毒物学の観点から、意見されています。
玄米は、
土壌から、有害物質であるヒ素を吸い上げたり、
残留農薬を含んでいたりすることが、
心配されています。
玄米を精米することで、
約80%の農薬が除去されることから、
お米は、精米をした方がいいと言われています。
(参考:米(玄米)に残留する農薬の調理による減少について)
以上を踏まえて、
元化学系研究者である私は、
「玄米を食べない方がいい」と考えています。
玄米の残留農薬の人体への影響とは?
では、
「玄米の残留農薬の人体への影響」について見ていきましょう。
(参考:Review on pesticide residue on rice)
(参考:Dietary pesticide exposure and non-communicable diseases and mortality: a systematic review of prospective studies among adults)
まず、
残留農薬には、以下のような健康リスクを
引き起こす可能性があります。
残留農薬が引きおこすとされる健康リスク:
発がん性、内分泌攪乱、神経毒性、免疫毒性、生殖毒性など
また、
お米を栽培する時に使われる農薬は
一種類ではありません。
つまり、
玄米には、複数種の残留農薬が含まれているのです。
複数種の農薬が混ざった場合、
単独の農薬よりも、高い毒性を示すこともあり、
人体への影響は、まだ十分に理解されていないとされています。
そして、
最も大事なことは、
残留農薬の人体への影響は、
「年齢」「性別」「遺伝的要因」「栄養状態」「暴露期間」などによって、
異なるのです。
もしも、知り合いに、
「玄米を食べて健康になった」
と嬉しそうに報告をされたとしても、
誰もが、それと同じ効果を得られるとは限らないと
考えることができるということです。
残留農薬を多く含む食材は、食べるメリットが打ち消される!?
残留農薬に関するレビュー論文に興味深い報告があります。
(参考:Intake of fruits and vegetables according to pesticide residue status in relation to all-cause and disease-specific mortality: Results from three prospective cohort studies)
本報告では、以下のような結果が示されました。
「残留農薬が少ない野菜や果物の摂取量が、死亡率と逆相関にある一方で、
「残留農薬を多く含む野菜や果物」を食べる量は、死亡率と非線形関係となった。
「残留農薬の少ない野菜や果物」が、
体に良いのは、ご想像の通りです。
その一方で、
「残留農薬の多い野菜や果物」は、
その食べ物から得られる栄養的なメリットを、
残留農薬が打ち消してしまっているかもしれないというのです。
つまり、
可能な限り、残留農薬が少ない食材を選ぶことが、
体に良いことにつながるのです。
そのため、あえて、
残留農薬を多く含むことが分かっている玄米を食べる必要はないのではないか?
という考えにつながるのです。
残留農薬は、内分泌かく乱性を有するため注意!?
そして、特に残留農薬について、
心配されるのは、「内分泌かく乱性」です。
農薬には、
「内分泌かく乱物質」の疑いのある化学物質が、多く存在します。
経済産業省のHPによれば、
「内分泌かく乱物質」とは、
「生物個体の内分泌系に変化を起こさせ、その個体又はその子孫に健康障害を誘発する外因性物質」
と定義されています。
(経済産業省>内分泌かく乱物質問題)
わかりやすく表現を変えれば、
「生物のホルモンの働きを乱して、その生物やその子どもに健康問題を引き起こす外部の物質」
ということになります。
「内分泌かく乱物質」は、
「ホルモンの働きを乱す」という作用の仕方をするため、
微量であっても、その効果をあらわす可能性があることが指摘されています。
そのため、
可能な限り、残留農薬は避けておくべきだと言えるのです。
結局、玄米の残留農薬は気にしないで大丈夫なのか?
さて、今回は、
「玄米の残留農薬には注意しないといけないのか」
について、見てきました。
私は、
「食べない方がいい」と判断しました。
もちろん、
栄養学的な面からは、
白米より、玄米の方が良いことも理解しています。
ただし、
玄米には、体に悪い成分が、いくらか含まれていることは、
絶対に忘れてはいけません。
その「体に悪い成分」は、
玄米から得られる栄養のメリットを打ち消してしまうかもしれません。
財布と相談して、
とれる対策を採っておくというのも
賢い判断だと思います。
インフルエンサーの方の中には、
玄米を勧める方もいらっしゃいますが、
これは、「有機玄米」を選んで食べた場合の話ということで、
判断材料の一つとしておきましょう。